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イベントスチル

[学園編]

 一「す、杉本〜! よかった〜!!」

 葵「わ、……はは。オーバーだな」

急に抱きつかれ驚いたものの、友人同士で盛り上がって塚田が抱きついたりするのを見かけたことがあるからそれと同じようなことだろう。
わかっているものの、少しどきどきしてしまった。

宏也「杉本君から見ると一って子供っぽいでしょ」

 葵「いえ、そんな」

 一「杉本ってすげぇいい匂いする」

 葵「…っおい……」

首筋のあたりをくんくん嗅いでくる。
髪が肌に擦れてくすぐったい。

 葵「…っ、塚田……」

 一「こんなに近くで見たことなかったけど肌白くてきれい」

宏也「どれどれ」

 葵「!? ……あ、あの……っ、お兄さん……」

宏也「お兄さんはなぁ……。んー俺も塚田だし。宏也って呼んで」

 葵「呼ぶって……」

腕をぐっと掴まれて黙った。
ときめきより不安な感情が己の中に広がっていくのを感じる。

優しそうなのになんで俺は……

 一「えー兄ちゃんずりぃ。俺も杉本に名前で呼ばれたい」

宏也「一はなんでも俺がすること真似したり羨ましがったりするんだ。子供だよね」

 葵「真似はしませんけど……俺も兄のことは気になりますから人のこと言えないです」

兄弟仲がいい二人を見てつい普段は言わないことを言ってしまった。
彰本人には絶対知られたくないことだ。

宏也「お兄さんいるんだ」

 一「杉本の兄ちゃんならめっちゃかっけーんだろうな」

 葵「そんなことない」

口では否定しているが彰はすごくかっこいい。
ブラコンで変態だけに認めたくないものだが。

宏也「お兄さんにはなんて呼ばれているの?」

 葵「葵ですね」

 一「クラスじゃ典雅の奴しか名前呼び捨てにしてないんだよな。羨ましい。俺も呼んじゃ駄目?」

(く……っ、またそんな犬っころのような目で見て……)

(間近な距離でおねだ……お願いされて断れるわけもなく……)

 葵「かまわない……」

(これはしょうがない。不可抗力だ)

 一「やった! 葵ー…」

 葵「う……っ」

宏也「葵君、面白いな〜」

うろたえているとくすりと笑われてしまった。

 一「葵も。ほら、一って」

 葵「は、はじ……一」

 一「うん!」

ぱああっと眩しい笑顔にまぁいいかとほだされてしまう。
絶対に手をださないように気をつければいいだけだ。

宏也「俺も呼んでよ」

 葵「……宏也さん」

宏也「さん付けっていいね。たまんないわ」

腕をさすられて体が反応してしまいそうになった。
慌てて首を振ると一が不思議そうな顔で俺を見つめる。

 葵「あ、あの二人ともそろそろ離れて欲しいだけど」

 一「あ〜、ごめんごめん。つい嬉しくてさ」

宏也「俺ら兄弟ってスキンシップが過剰なんだよね」

 葵「はは……」

ふれられて嬉しいのもあるし困るのもあってなんとも答えようがなかった。
曖昧に笑うしかなくて歯痒い。

もしもゲイじゃなければ……ゲイだとしても決めた相手がいるのならば心動かされないだろうに。
二人ともタイプは違えど魅力があってつい惹かれてしまう。