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イベントスチル

[異世界編]

獣が俺の服をくいくいひっぱってベッドのほうに誘導した。
血で汚れたズボンでのれば布団が汚れてしまう。
ズボンを脱いでから腰かけると獣もベッドに飛び乗り俺の太股にふさふさの尻尾を置いた。

 葵「……」

確かに昔は誰かが住んでいたのかもしれないが今は違うようだ。
生活感がまったく感じられない。

 葵「だけどまぁ…不法侵入だよな」

異世界の扉がでてきてラドゥに拉致され、変な集団に追っかけられ、獣に助けられて今は不法侵入……
随分、日常から離れてきてしまったものだ。

 葵「どうなっちゃうんだろうな」

獣の頭を撫でながら途方にくれてしまう。
先ほど追いかけてきた男達からすると人間である自分は獲物のようだ。
助けてくれた獣は自分を保護してくれているもののずっとこのままでいられるとはとても思えない。

 葵「まぁ、なるようにしかならないよな」

長い耳をねかせ気持ち良さそうな獣を見ていると緊張感や不安が軽減される。
ふさふさの尻尾は温かくて極上の毛布といったところだ。

 葵「気持ちいいな。すげぇさわり心地いい」

手の甲で腹のあたりを撫でる俺をじっと見ている。

 葵「名前あるかもしれないけど俺わからないからあだ名つけさせてもらおうかな」

青みがかった灰色の獣は蒼の魔獣と呼ばれていた。
ただ俺から見ると灰色の方が近い気がしてしまう。

 葵「アッシュ……がいいかな。アッシュ」

呼びかけると手にくいくい鼻を押し付けてくる。
この魔獣が俺の言っていることを理解しているのかは不明だが呼びかけに応えてくれるのは嬉しい。

 葵「俺は葵って名だ。よろしくなアッシュ」